一番強いのは誰?
この胸騒ぎはなんだろうと感じていた矢先、らんがイライラしているのが分かった。
「どうした?」
と私が聞くとカズが保有していた怒りの感情が強いのもあるが、葉子があれやこれやと指示を出しているらしい。
葉子は他の人格とは違い一つ上の存在である。
葉子の指示でらんが動き、みんなをまとめていた。
葉子は普段姿を表さず2階に部屋があり、紙飛行機のメモを飛ばしてくるそうだ。
そのメモが大量に降ってきて無茶苦茶言っている事にらんは腹を立てている。
しばらくするとらんは立ち上がり苛立ちを隠しきれず
「葉子、消してきていい??」
と言い外に出て行ってしまった。
私達は何もできず彼女が帰ってくるのを待つしかなかった。
しばらくするとらんが帰ってきた。
少し様子がおかしい…。
「あはははははははははは!!!!消してやった!!!!あははははははは!!!」
今までにないテンションの高さだ。
普段はクールならんがこんなにもテンション高いのが心配になった。
「あいつ、こんな事してたのか!!」
らんが大きな声で叫ぶ。
事情を聞くと、葉子は記憶を管理する役割で必要ないと判断した記憶を各人格から取り除き保有していた。
葉子は消えてしまったけど、記憶は一時的にらんが持っており今晩中に必要な記憶を戻していくと伝えられた。
少し心配ではあったが、私達は何もできない…。
見守ることしか出来なかったのだ。
今までのバランスが崩れ始めた日
今まで10人でバランスを保っていた人格が、1人抜け9人に。そして、目覚めておらず記憶を共有していない鈴音が表に出てきた事により、彼女たちの中ではとんでもない事が起きていた。
まず一番やんちゃだったカズが居なくなる時に、大暴れしてしまったが故に鈴音のドアが開いた事。
そして、みかんはパニック、れいは泣き叫び、沙良は怯えていた。
各々の部屋もぐちゃぐちゃに荒らして消えていったのだ。
れいは怖くなり泣き叫びながら体から抜け近くの公園で1人になっていた。バランスが崩れた事が原因か、それともカズが暴れたのが原因かは分からない。
しばらくして皆が気がついた。
「れいちゃんが…いない…」
すると百の身体に異変が生じた。
突然泣き出したのだ。
しばらくするとおさまって、らんに交代した。
らんは
「誰だ?あいつ?さっきからよく分からないのがいる」
と言うのだ。
れいの気配を辿って行くと近くの公園であやかと言う女の子の霊と遊んでいた。
事情を聞くと、今体にいるのは一緒に遊びたくて連れてきたりさという霊。
りさは気が強かったのか、れいを体から追い出してしまった。
わかりやすく言うと憑依という言葉だろうか。
れいを説得して体に帰ってきてもらい、りさを追い出した。
れいは幼い為、同世代の子と遊びたかったのだろう。友達が欲しかったのだろう。
数時間が経過し少し熱りが覚めた。
しかし胸騒ぎはおさまらないのは何故だ?と私は疑問に思っていた。
人格が体から抜けると大変!!
カズが家出ならぬ体出をしたその日から、目まぐるしく時間が過ぎていきました。
そもそも解離性人格障害という症状は、精神的なストレスやトラウマ、過度なプレッシャーなどにより人格が分裂していくことです。
一人では抱えきれない物を他の人格が対応することにより、平常を保っている状態です。
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では、人格が体から出てしまうとどうなるのか?
もちろん体に戻らないと消えてしまいます。
また、消えた人格の役割を他の人格が補わなければいけません。
カズの場合、「怒り」を持った人格だった為、時折暴れたりした事もあった様です。
それによって「怒り」は他のメンバーに振り分けられ、今まで保っていたバランスが崩れてしまいます。
自分がいるとみんなに迷惑をかけてしまうと思ったカズは体出をし、結局魂のみとなり消えてしまいました。
メンバーは9人となり怒りの感情はらんが引き継ぎました。
そこからメンバーに異変が生じます。
らんは普段よりイライラしやすくなり、みかんもイライラする事が増えました。そらは落ち込みやすくなったある日…。
朝目が覚めると誰かわからない人がいる。
メンバーの一人だが、全く見覚えがない…。
しばらくすると彼女から声をかけてきた。
「今自分に何が起きていてどういう状況か全くわからない」
記憶を共有している彼女達だが記憶がない??
私はらんに伝えられた情報により、鈴音は3ヶ月ほど表に出ておらず別部屋である事を聞かされていた。
私は彼女が誰なのかを知るため声をかけた。
「あなたの名前といつから記憶がないのかを教えて」
すると彼女は
「私は百(もも)、ここ3ヶ月ほどの記憶が抜けている」
これで鈴音だという確信を得た私は、状況を説明した。
「百(もも)の親も姉も状況を把握しているので、連絡してもらっても構わない」
と伝えると少し考えたいとの事だったので、そっとしておいた。
しばらくすると鈴音の様子がおかしい…苦しそうだったので背中をさすっていた。
その時聞き覚えのある声で
「すいません、大丈夫です」
らんが無理やり表に出て鈴音を引っ込めたのだった。
平和なはずだった生活が急変した日
お互いの事と状況が理解出来た上で生活を始め、数日…。
主に出てくる人格は、らん、みかん、そらの3人。
記憶の共有や重要事項の伝達は各人格が行っているのですが、主人核の百(もも)と鈴音は別部屋なので分からないと聞きました。
他の人格に関しても黒川が把握しているので大丈夫だと聞いていました。
これからの生活を考えてくれているらん。
生活に楽しさを提供してくれる明るいみかん。
私が鬱で落ちた時に励ましてくれるそら。
この3人には感謝の言葉しかありませんでした。
みんな違う趣味思考を持っており、表情や仕草も異なるため私としては急に友達が増えた様な感覚でした。
黒川が仕事の面接の為、一度百(もも)の実姉の家に戻る事になりました。
採用を貰い翌日にはまた私の家に戻り生活が始まりました。
役所に手続きをしたり、住む家を探したり…それらがやっと落ち着いた日。
百(もも)達の様子がどうもおかしかった。
どのメンバーも不安そうにしている。
黒川は後は生活保護費を貰うまで動けないのは理解出来るが、ずっと寝ている。
みかんは寂しくなり私達と行動を共にする事が増え、最終的にみかんは引きこもってしまった。
その事に気がつかない黒川は携帯ゲームをして寝る日々を過ごした。
我が家にWi-Fiがある事を良い事に…。(本音)
私達も次第に黒川に対して不信感をつのらせる様になっていました。
それを感じたからかは分からないが、カズが中で暴れ回っている様だ。
カズはみかんに好意を寄せていたが、同じ体を共有する者としてタブーとされていた。
みかんには幸せになって欲しいと心から思っているのはカズだっただろう。
黒川がこんなんだったら…俺が…でも…畜生!!
そんな気持ちだったんだろうと今なら分かります。
耐えきれず投げやりになってしまったカズは家出ならぬ体出をしてしまいました。
共同生活を始めるにあたって
4人の生活が始まるにあたり、お互いの状況を話しました。
百(もも)は解離性人格障害であり、主人格の百(もも)はもう何年も眠ったままである事。
治療のために入院をしていた事。
そして10の人格を保有しており、各々には役割があると言うことを教えてもらいました。
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①しっかり者でみんなのまとめ役のらん。
②陽気で無邪気で少しぬけているみかん。
③ゲームが大好きで鬱持ちのそら。そしてKと流星。
(Kは引きこもり、流星は女好き。表に出るのはそら)
④とても乙女で恥ずかしがり屋の沙良(さら)。
⑤ヤンチャでキレやすいが本当は優しいカズ。
⑥寝る事が大好きなこたち。
⑦泣き虫ですぐ泣いてしまうれい。
⑧明るく真っ直ぐな性格の鈴音(すずね)。
(彼女は自分が主人格のももであると思っている)
⑨これらの人格の記憶を司り指示を出している葉子。
⑩そして眠ったままの主人格である百(もも)。
黒川は数年前にヤンチャをしてしまい警察のお世話になった事。
キレやすい性格だった為そのまま病院に移され入院生活をしていた時にみかんに出逢った事。
自閉症の疑いがあり家族関係は険悪で帰る場所がないという事。
私は鬱になってしまった事、私の彼は人間関係で仕事が上手くいかず転職したが採用取り消しになった事と、決して経済的に余裕があるわけではない事を伝えました。
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期日は黒川の仕事が始まり生活保護を受給し、家が決まるまでの約10日。
百(もも)達に関しては気持ちが落ち着くまで居ていいと伝え共同生活が始まりました。
運命の出会いと衝撃の事実
毎日布団にくるまり寝ているだけの毎日に嫌気がさして来た。
そんな時に出会った配信アプリでゲームの配信や雑談配信を見て気持ちを紛らわせていた。
そこで出会った配信者様と仲良くなる事が出来ました。
声を聞く限り女性…ただ不思議な雰囲気を出していました。
彼女は私が鬱と知って連絡をくださりました。
「生きてるだけですごいんだよ。生きていてくれてありがとう。」
そう言ってもらえた事で心からの感謝と涙が止まりませんでした。
ある日、彼女が困っている事を知り私は連絡をしました。
「家にいられなくなった」
私は彼女の一言で救われた。だから私は彼女を救いたいと思って自分の家に呼びました。
ここからは人物の名前を偽名にさせていただきます。
彼女の名前は百(もも)。合流する際に彼氏の黒川が一緒である事。
そして百(もも)は解離性人格障害、古い表現だと多重人格であるとカミングアウトされました。
そして百(もも)は主人格であるが、もう何年も眠りから覚めていないという事も。
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私が出会った時はらんの人格、移動途中でみかんの人格に変わっていました。
配信していたのは、らんだった事。
黒川はみかんの彼氏である事も説明してもらいました。
私は今まで沢山の人と交流を持って来たので特に何の抵抗も無く彼女達を受け入れました。
百(もも)の実家は男禁制、実姉の家に住んでいたが他の人格(ここではメンバーと表記します)と大喧嘩をしてしまい追い出されてしまったようです。
私の家に短期間ではあるが私と彼、百(もも)とメンバー、黒川での4人の生活が始まりました。
鬱の苦しみが落ち着くまで
鬱と診断され通院し投薬を続けたが、なかなか良くならず何も出来ない自分に不甲斐なさを感じました。
今まではバリバリ働いていた自分が急に何も出来なくなり自己肯定感が無くなり、自分の存在意義とは?という疑問にぶち当たりました。
症状としては
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- 全身の倦怠感
- 自律神経の乱れ
- 不眠
- 無気力
- 食欲不振
- 気分の低下
- 時々やってくる自殺願望。
体調が悪くなる事は今までもよくありましたが、こんなに酷くなるのは初めてで、薬が効いて少し落ち着くまでに正直2ヶ月はかかりました。
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何かストレスがかかると糸がプツンと切れたように涙が止まらず、マイナス思考も止まらずひたすら泣き続けました。何故泣いているかも分からないまま、ひたすら泣き続けました。
私には交際している彼がいます。
同居をしているので泣いている私を見てどうしようも無かったんだと思います。
彼は働いているのに寝込んでいる私を見てどんな気持ちだったんだろう。
そんな事を思うととても生きた心地がしませんでしたが、彼は私の心の支えになってくれました。